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不倫したパートナーとの財産分与
財産分与は、たとえ相手の不倫が原因で離婚した場合でも、相手から請求されることがあります。不倫をしたパートナーに財産分与をする必要はあるのでしょうか。
今回は、財産分与についてや流れ、注意点、財産分与を有利に進めるためのポイント3選をご紹介します。
財産分与って?対象となる財産とは
財産分与とは、結婚生活を送る中で2人で貯蓄した財産を分配することです。
具体的に、財産分与の対象となる財産の一例は以下の通りです。
▼財産分与の対象となる財産(一例)
- 預金
- 家
- 家具・家電
- 不動産
- 車
- 有価証券
- 退職金
- 年金
- ローンなどの負債
分配する資産にはプラスの資産だけでなく、負債などのマイナスの試算も含まれるので注意が必要です。
反対に、お互いが婚姻関係になる前に所有していた「特有財産」は財産分与の対象外となります。
▼財産分与の対象とならない特有財産(一例)
- 独身のときに貯めた預金
- 独身のときに入手した不動産
- 相続した財産
- 贈与された財産
- 別居した後に入手した財産
特有財産であっても、例外として「夫婦の協力があってこそ価値が上がった」「夫婦2人の努力で価値を維持できた」などの場合は、財産分与の対象として認められることもあります。
協議離婚をする場合は、財産分与の対象となる財産を見逃してしまうリスクなどもあるので、弁護士などに相談する方法がおすすめです。
財産分与の性質
財産分与は、以下の3つの性質を持ちます。
- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
1つずつ確認していきましょう。
清算的財産分与
「清算的財産分与」とは築いてきた共同財産を、資産への貢献度を考慮して公平に分配することです。財産分与の配分率は「原則2等分」とされていますが、協議離婚の場合は配分する内訳を決めることができるので、原則と異なる結果になることも珍しくありません。
浮気をして離婚の原因を作った側は「有責配偶者」とされますが、有責配偶者の場合でも財産分与を請求することができます。
また、夫・妻のどちらか片方が専業主婦(主夫)をしていた場合でも「働いて収入を得るためには、家で家事をこなしてくれる存在が必要」という考えがあるので、配分比率に影響することはありません。
扶養的財産分与
夫婦の一方の経済力が低い場合に、相手の生計を補助するために行うことが「扶養的財産分与」です。扶養的財産分与が認められた場合は、相手の生活を補助する資金を一定期間支払うことになります。
例えば、相手が以下の様な状態である場合、扶養的財産分与が認められる可能性が高いと言えます。
- 幼い子供がいてフルタイム勤務ができない
- 専業主婦(主夫)をしており、離婚後すぐの経済的な自立が困難
- 重い病気を抱えている
- 高齢である
裁判離婚で扶養的財産分与を請求する際には、様々な条件をクリアする必要がありますが、協議離婚の場合は、お互いに合意を得られれば請求することができます。
慰謝料的財産分与
浮気が原因で離婚した場合には、財産分与の中に慰謝料も含める「慰謝料的財産分与」が行われることもあります。
慰謝料的財産分与が行われた場合は、有責配偶者が慰謝料の意味を込めて、相手に財産を多めに配分します。例えば、大切にしていた車をお互いに要求した場合に、浮気をされた側に譲る、等の事例があります。
慰謝料請求との主な違いは、現金以外の財産で支払っても問題がないところです。
慰謝料の相場とポイントについては、以下の記事で紹介しています。

財産分与の流れ
財産分与は、主に以下のような流れで行われます。
- 協議離婚で決める
- 裁判所に財産分与請求調停を申し立てる
- 双方の合意が得られない場合は裁判で最終決定
協議離婚で財産分与を決める場合は、双方の合意さえあれば、自由に配分することができます。
双方が合意した場合は協議離婚のみで決定されますが、決まらない場合は裁判所に調停を申し立てて、調停委員に仲介してもらう必要があります。調停期日は1~2カ月に1回程度の頻度で行われ、内容によっては、決着までに1年程度かかることもあります。
また、調停成立の見込みがなく「調停不成立」となった場合は、裁判で最終決定することになります。
財産分与を請求する際の注意点
財産分与を請求する際には、以下の2点に注意しましょう。
- 財産分与を請求できる期間がある
- 離婚協議書に内容を記録しておく
財産分与は請求できる期間がある
財産分与を請求できる期間は「離婚届を提出してから2年以内」と定められています。
離婚と同時に財産分与を行う場合には問題ありませんが、離婚後に財産分与の手続きをする場合は、請求期間が過ぎていないか?を確認しましょう。
請求期間が過ぎると、強制的に請求することはできなくなりますが、相手が財産分与に応じる意思を見せる場合は、この期間に関係なく請求することが可能です。
離婚協議書に内容を記録しておく
財産分与で確定した内容は、離婚協議書に記録しておきましょう。
協議離婚の際に確定した養育費や慰謝料などの情報を証明できる契約書が「離婚協議書」です。記載した内容は第三者に証明することができます。
この「離婚協議書」に財産分与の内容を記録しておくことで、言った・言わない問題の対策はもちろん、正確に内容を実施できているか?などを確認する材料にもなります。
「離婚協議書」への記録だけでなく、法務省が管轄する公証役場で発行できる「公正証書」も作成しておくとさらに安心です。
万が一、相手が養育費などを支払わなくなった場合に、裁判を開かなくても強制的に相手の財産を差し押さえられるほど強い効力を持ちます。
最初の約束を守らないケースが増えているので、保険の意味も込めて作成しておきましょう。
財産分与を有利に進めるためのポイント3選
財産分与を有利に進めるためのポイントは以下の3つです。
- 請求可能な財産は全て請求する
- 有責配偶者として認めさせる
- 弁護士に相談する
請求可能な財産は全て請求する
請求可能な財産は、全て請求することが財産分与を有利に進めるポイントです。
財産を全てリスト化し、請求し忘れている財産が無いか?を念入りに確認しましょう。万が一、相手が財産を隠していた場合は、日本弁護士連合会が行っている弁護士照会制度を利用することで、隠している財産を照会することができます。
有責配偶者として認めさせる
慰謝料的財産分与や慰謝料請求においては、浮気をした側が「有責配偶者」であることが前提となっています。
「有責配偶者」として認められるには「継続的に浮気・不倫相手と体の関係を持っている」ことなどを証明できる決定的な証拠が必要です。
不貞行為を行った回数が多いほど相手が不利になり、より多くの財産を配分してもらえる可能性が高まるので、確実な証拠を得るために、探偵などのプロによる浮気調査を利用しましょう。
自分で浮気調査を進める方法や浮気の兆候についての記事では、今からできる具体的な調査方法などを紹介しています。また、実際に探偵事務所へ浮気調査を依頼する時のために、探偵事務所の比較ポイントも参考にしておくと良いでしょう。
弁護士に相談する
弁護士に相談することで、財産分与を進める上でのアドバイスや様々な支援を受けることができます。
慰謝料を請求するか、慰謝料的財産分与を請求するか、どちらがより多くの金額を請求できるか?などについても、弁護士に相談する方が良いでしょう。
浮気の慰謝料に関しては、不倫相手にも請求することができます。ただし、条件等があるので、以下の記事を参考にして下さい。
▼関連記事:浮気の慰謝料について~不倫相手にも請求するには?~

まとめ
- 財産分与とは、結婚生活の中で築いてきた財産を分配すること
- 財産分与は「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つの性質を持つ
- 財産分与の流れは「協議離婚」で解決しなければ⇒「財産分与請求調停」⇒「裁判」
- 財産分与を請求する際の注意点は「請求期間がある」「離婚協議書などに内容を記録しておく」
- 財産分与を有利に進めるためのポイント3選は「請求可能な財産は全て請求する」「有責配偶者として認めさせる」「弁護士に相談する」